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伝統発酵調味料“かんずり”

2017.3.22

 今年の1月にCafé&Meal MUJIのデリで初めて使った新潟県妙高市の伝統発酵調味料“かんずり”。“かんずり”は「寒造里」または「寒作里」とも書くように、唐辛子を雪の中にさらして、糀、柚子、塩を加えて寒い時期に仕込む辛味調味料です。

 そのかんずりの仕込みには欠かせない「雪さらし」の見学に行ってきました。妙高市は北陸新幹線で東京から約2時間、南北に長い新潟県の南西部に位置する豪雪地帯で、上越市、糸魚川市とともに「上越地方」とよばれています。もともと妙高市の各家庭では、冬の間に「手前かんずり」を仕込んでいたそう。現在は有限会社かんずりが「3年熟成」と定義づけていますが、各家庭で作ったものは、保存していたものがなくなったら次のものを使い始めるため、熟成させる期間はあまりなく、手前味噌と同じように家ごとに味も違ったそうです。

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 雪さらしは、毎年大寒の日に「雪さらし(仕事)はじめ」として、3月上旬頃まで15回ほど行われます。「雪さらし」というくらいなので、雪がないとできず、また唐辛子をまいた翌日に雪が降るのが良い環境だそうです。(=唐辛子が雪と雪でサンドされたような状態が良いそう。)かんずりに使う唐辛子はすべて地元のもので、山間地の畑で栽培されています。もともとこのあたりには、上杉謙信が京都から持って帰ってきたといわれる唐辛子があり、それらの唐辛子の中から品質の良いものを交配し続け、通常見かける約3倍ほどの大きさで肉厚の品種を生み出したそうです。この唐辛子を中心に3種類ほどの唐辛子を使っています。

 夏に収穫された唐辛子は天然の海水塩で塩漬けにします。この唐辛子を寒い時期に3~4日間ほど雪にさらすことで、雪がアクを吸って唐辛子の甘みを引き出し、雪の水分で唐辛子の種まで柔らかくするので、その後の加工がしやすくなるそうです。

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 私たちも「雪さらし」の作業を体験させていただきました。15センチほどの長さのある大きな唐辛子を高く放り投げながら雪の上にまいていくのですが、時折吹く強風に唐辛子が飛んでしまうため、あわてて場外へばらまかれた唐辛子を拾ったり、密集した唐辛子をばらしたり・・・。

 この日は地元の小学校3年生も体験学習に来ていました。毎年3年生に体験してもらい、このときにさらした唐辛子を3年間熟成させたものを、3年後に卒業プレゼントとして渡すのだとか。地元の味を知ってもらい、また大人になっても覚えておいてもらいたいという気持ちで体験学習を続けているのだそうです。ちょうどケーブルテレビの取材もあり、個性豊かでかわいい3年生の姿に、見に来ていた人たちからは笑顔が絶えませんでした。

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 完全に雪に埋もれてしまうと掘り出すのが大変なので、雪の上にネット、さらに唐辛子の上から色付きのネット、目印の竹を刺しておき、埋もれてもどこにあるかわかるようにしておきます。(たまに3~4日で一メートルほど積もってしまうこともあります。)雪さらしを終えた唐辛子は、回収して洗浄したあと粉砕し、海水塩とすりつぶした柚子、米糀を混ぜてから樽に入れて3年間発酵させます。樽に入れたあとも、毎年6~7月頃に「手返し」と言って発酵を促す作業を行います。また蔵の中の場所によって発酵度合が違うため、熟成させている3年間には何度か樽の位置をかえて均一に発酵するようにします。

 そうやって3年間熟成させたら、最後の年の11~12月に樽ごと「寒ざらし」を行います。これで唐辛子の味を引き締め、よりマイルドな味に仕上げていきます。こうして出来上がったかんずりは瓶や袋に詰めて出荷されますが、通常は常温でも保存できるよう熱処理を行い、糀の発酵をとめてしまいます。Café&Meal MUJIで使ったかんずりは「生」の状態なので、熱処理されたものよりも「香り」や「旨味」が強いのが特長です。今年は終わってしまいましたが、また来年の冬にもかんずりを使ったデリを販売予定です。

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 作業終了後にいただいた「かんずり餅」。揚げ餅にかんずりと醤油などを混ぜたタレをつけたシンプルなものですが、「美味しい!デリで使える!」地元の味を発見しました。

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