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夏の味〜絹かわなすの産地を訪ねました〜

2012.8.10

 愛媛県西条市は、道後温泉で有名な松山から東へ特急電車で一時間ほど行ったところにある、瀬戸内海に面した町です。後方には西日本最高峰の石鎚山がそびえ、この石鎚山から流れている伏流水が地下水脈に満ちており、市内の限られた地区にだけ湧いています。この水を「うちぬきの水」と言い、地面に杭を打って抜いたら自然と噴き上げてくるほど豊富な水量です。市内各所にこの「うちぬきの水」が自噴しており、今回見に行った「絹かわなす」もこの「うちぬきの水」で育てられています。

京都の賀茂なす、大阪の水なす、高知の米なすは全国的にも有名で、スーパーや飲食店でも見かけますが、「絹かわなす」は地元西条市以外ではなかなか見かけることがありません。

「絹かわなす」という名前は初めて聞いた、という方がほとんどだと思います。

東予と呼ばれる、香川から伊予西条あたりは元々丸なすが主流の地域ですが、その中でも絹かわなすは知られた存在ではありません。また、少し西へ行った松山では長茄子が主流の地域のため、全くといっていいほど知られていないそうです。栽培が難しく、たくさん出回らない品種のため、同じ四国、愛媛県内にも流通していないのです。

生で食べられます!

「絹かわなす」はその名のとおり、絹のようになめらかでやわらかい皮が特徴です。激しい雨、鳥や虫の足跡でも皮に傷がついてしまうほどのやわらかさです。また、あくがないので切っても真っ白で黒くならず、えぐみもないので生で食べると青りんごのような甘みのある果肉です。さらに長さが約20cm、重さが350~400gと普通の茄子の2~3倍の大きさになります。私達も初めて見たときにはその大きさにとても驚きました。

6月から10月にかけて栽培、収穫される「絹かわなす」は、長さ100メートルの畝に均等に苗を植え、花が咲いたらひとつひとつ手作業で受粉させていきます。受粉させたら目印として花に青い食紅を吹きます。この受粉作業で茄子の形が決まるので、とても大事な作業です。

実がついてから規定の大きさ(約20cm)になるまでは3週間ほどかかりますが、きれいな丸い形になるかどうかは大きくなるまでわかりません。この間に雨が多すぎたり、涼しかったり暑すぎたりといった天候不順によって生育を妨げられることもあります。

白い部分を「のびしろ」と言い、朝は白かった部分が陽に当たり夕方にはうっすら色がつきます。毎日少しずつ大きくなり、少しずつ濃い紫色になっていきます

「良い革のように、しっとり手に吸い付くような肌のものが良い」と教えてもらい、私達の顔の大きさほどに大きくなった絹かわなすの収穫をしました。つやつやと張りのある皮は触っただけでやわらかい!それにしても大きい!

農産物はそれぞれ、適した栽培方法や肥料のやり方、肥料をやるタイミング等マニュアルがあるものが多いのですが、この絹かわなすにはそのようなマニュアルがなく、生産者の方の「経験」と「勘」で作られています。やり方を教わっても、同じように大きく丸く育たないので、生産者が増えてもなかなか収穫量が増えないのが悩みだそう。

収穫された茄子のうち、「絹かわなす」と呼ばれるのは「秀優良」の規格のうち、「秀」と「優」のみ。

それ以外は「絹かわなす」と呼ばれず、茄子として加工用に出荷されます。

収穫の最盛期となる夏。「美味しい絹かわなすを一所懸命作り続けたい」という生産者の方々の思いも料理に込めて、Café & Meal MUJI では今年も「絹かわなす」を使ったメニューをご用意しています。

やわらかくトロッとした食感の「絹かわなす」は、夏にしか味わえません。季節の味を、ぜひご賞味ください!

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