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いのちをいただく「森林ノ牧場 ジャージー牛乳」

2013.9.17

 「Café MUJIのソフトクリーム」(一部店舗では「森林ノ牧場の牛乳と本和香糖のソフトクリーム」)で使っている森林ノ牧場(栃木県那須郡那須町)の牛乳。東日本大震災から2年半がたちましたが、森林ノ牧場ではまだ放牧ができないため、牛たちを近くの佐久間牧場さんに預け搾乳していただいています。

 佐久間牧場さんは那須岳の麓、高原地帯におじいさんの代から続く酪農家さんです。佐久間さんのところでは、牧草も牧場内で育て自給されています。このあたりの酪農家さんの牛乳は大手メーカーの牛乳に入っていることが多いそうですが、消費者の顔が見えづらい(=自分の仕事の成果がわかりづらい)ため、毎日の仕事が生産物を生産するだけの”作業”になってしまいがちで、物足りないと感じてしまうそうです。東京牛乳の生産者の方にお会いしたときも同じことを仰っていましたが、佐久間さんもやはり「顔が見える」ということが大事だと仰って、私たちCafé&Meal MUJIでジャージ牛乳を使ったメニューを出していることを喜んでくださいました。

佐久間牧場で搾乳の様子を見せていただきました

 佐久間さんのところでは、森林ノ牧場さんから預かっているジャージー牛以外に、ホルスタインとブラウンスイスも飼っていらっしゃいます。搾乳時は、ジャージー牛から順番に搾乳機(囲い)の中に入っていきます。牛たちにも相性があって、このとき横に嫌いな牛がいるといやがって囲いに入らないそう。(牛といえども女性同士、色々あるようです。)

 順番に囲いの中に入ったら、搾乳の準備にとりかかります。まずは搾乳時に邪魔になる尻尾を柵にくくりつけます。

 次に、乳首を拭きます。これは乳首をきれいにすることに加えて、子牛が乳を飲む前と同じような状態にすることで、乳首を刺激してホルモンを促し搾乳しやすくします。そのあと「前搾り」と言って、乳頭に残っている乳を出します。(乳首付近の乳には雑菌が含まれているので、捨ててしまいます。)

 いよいよ、搾乳機をとりつけます。牛の体にも個性があり、乳首が4つある牛、2つしかない牛と色々。牛にあわせて搾乳機を取り付けていきます。

 搾乳が終わったら、乳首に赤チンのような消毒液をつけます。これで終了。搾乳が終われば、順番に柵から出ていき、食事タイムです。

 ところで、牛乳は何から出来ているかご存知ですか?実は血液から出来ています。牛が食べた食事は胃を経て消化吸収され、栄養素となって血液を通して全身へ運ばれるのですが、乳房にある乳腺細胞がその血液中の栄養素を取り込んで、牛乳のもとになる成分を作り出します。牛乳1リットルを作るのに必要な血液は約400リットル!本来は子牛のために出すお乳を私たちはわけてもらっています。

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(左)搾乳のやり方を佐久間さんに教えてもらいました。(中)搾乳中 (右)食事タイム

 ジャージー牛が一日あたりに出す乳量は10~20リットルですが、ホルスタインは50~60リットル。乳量を出すためには、ジャージー牛のように草だけの飼料では大きな体を維持するのは難しく、栄養価の高い穀物飼料が必要となります。日本の酪農はアメリカに追随しているため、ホルスタインを飼育しているところが多いため、大量の穀物飼料を輸入せざるを得ない状況になっています。ジャージー牛はホルスタインと比べると一回りほど体が小さく、子供でも扱いやすいサイズ(と言っても大きいですが)で穀物飼料が必要でないので、森の下草を食べてもらって山を生かす森林ノ牧場の放牧スタイルは理にかなっているのです。

森林ノ牧場の現在

 森林ノ牧場ではまだ放牧牛から搾乳することは叶いませんが、元々あった木々を伐採して大掛かりな除染を行った場所に育成牛(まだ子供を産む前の1歳くらいの若い牛)を放牧するところまでできるようになりました。この間まで子牛エリアにいた牛たちが大きくなって、新しい放牧地にいます。(放牧地の草も放射能検査をしており問題ありません。)ほんの少しですが、本来の姿に戻った牧場。牛たちを見る山川さん、山田さんがとても嬉しそうな顔をされていたのが、とても印象的でした。

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ソフトクリームミックスの製造を担当している山田さん(左)と、森林ノ牧場代表の山川さん(右)

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