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森林ノ牧場~森林と牛と人とのやさしい関係~

2015.7.30

 梅雨明け前の6月終わり、Cafe MUJIのソフトクリームを作っていただいている栃木県那須町にある森林ノ牧場を訪ねました。牧場の入り口ではその名のとおりとてもかわいい生後一か月半の”キュート”がお出迎え。

搾乳

 午前8時半、まず朝の搾乳の見学をしました。この牧場で暮らしている牛はジャージー牛。日本にいる牛のほとんどがホルスタインで、ジャージーは牛全体のうちの0.6%ほどととても少なく、約一万頭ほどしかいません。ちゃきちゃきとおてんばで人懐っこい性格の牛です。

 ジャージー牛乳はとても濃厚ですが、一日あたりの搾乳量は約15Lとホルスタインの約半分の量です。現在森林ノ牧場で搾乳できる牛は11頭。一回に一時間~一時間半かけて搾乳します。

 全頭の搾乳が終わると、牛たちは揃って広さ2.5haの広い放牧地に戻ります。放牧地まで、木と木の間の坂を一列になって登っていく姿が印象的でした。

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 放牧地(現在は除染のため木々が伐採された状態)では自然に生えた草を食べていますが、中には牛たちが食べられない草(大きくなったよもぎやギシギシ)もあり、今回はそれらの草をむしるお手伝いをしました。そうやって地面に目をやると、牛たちが糞をした場所には草が密集していることに気が付きました。糞は虫たちによって分解され、肥料となりやがて土にかえり、そこに草が生えてきます。「ここは1~2日前に糞をしたところ」「ここは糞をして数日たったところ」、普段ほとんど目にすることがない自然のサイクルを見ることができました。

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 森林ノ牧場では搾乳できないオスの牛や、老いて搾乳できなくなってしまった牛たちのお肉もカフェで調理して提供されています。ジャージー牛は赤身が多いため日本ではあまり需要がなく、ペットフードなどになってしまうことが多いそう。愛情をこめて育ててきた牛たちの「いのち」をいただくことが私たちにできること、とミートソースやシチューとして販売されています。この日もシチューをいただきましたが、とても美味しかったです。

森林

 一般的に効率性が優先され、狭い牛舎の中で穀物を与える酪農の方法とは異なる環境である”森林”で放牧されているのには大きな意味があります。

 森林ノ牧場のある山林や周辺の森は、かつて林業が行われていた場所でした。しかし海外からの輸入品との競争や、生産に時間と労力を必要とすること。また開発にもお金と労力が必要とされるため、森が放置されてしまう状態となりました。手入れがされていないためお金にならないような細い木が立ち並んだままの森。一度人の手が入ったことのある森は、手入れがされないと荒れてしまいます。このような森は日本では少なくありません。

 森で牛を放牧して、牛が下草を食べることで自然と森を開拓し、毎日牛乳を生産、その牛乳を販売することで森を整備、維持される場所にしたいとこの牧場が作られました。

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 森林と酪農を結ぶことで森林と牛、人との間にやさしい関係が作られている「森林ノ牧場」。そんな環境で生まれた牛乳を使い、Café MUJIのソフトクリームとして東京などの都市で暮らす人たちに食べてもらうことで、森林と都市の間にもつながりが生まれています。

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