Blog

なにわの伝統野菜「天王寺蕪」

2015.8.28

 なにわの伝統野菜「天王寺蕪(てんのうじかぶら)」は別名「天王寺浮き蕪」と言われています。
下の写真(左)を見るとおわかりのように、土から蕪の部分が出ており土に埋まっているのは細い根っこが10cmから20cmほどだけ。土から出ている部分が多いため、台風や大雨になると倒れやすかったり、この地上に出た部分を虫や鳥が食べに来たりと栽培時の苦労が多いそうですが、糖度がふつうの蕪の1.5倍以上と甘く、柿のような食感で煮崩れしにくいのが特長です。

天王寺蕪はその昔、徳川時代から明治末期までが栽培の全盛期であり、四天王寺僧坊の食料として摂州の天王寺村で広く栽培されていました。その香り、歯切れ、食味に優れた蕪として、かつては大阪の名物でした。
また明治の初めころまで、天王寺のあたりは一面蕪畑が広がっていたようです。
土地の市街化や、蕪の耐病性の問題から大正末期にはほとんど姿を見なくなりましたが、約20年ほど前から少しずつ栽培が復活しています。

IMG_9107.jpgIMG_9493.jpg

この天王寺蕪をはじめ「なにわの伝統野菜」を作っていらしゃる大阪市なにわの伝統野菜生産者協議会副会長の藤本さんも、作るのがあまりにも大変なので「やめたい」と思うこともしばしばあるそう。天王寺蕪に限らず、伝統野菜の作り手が少なくなっている要因のひとつが「作り方」だそうで、品種改良が進んだ野菜と違い、同じものでも大きさや形がバラバラであることや、旬の時期にしか作れないことから現在の流通には適しておらず、徐々に生産が減少しています。

本来、その土地の気候風土にあった野菜として確立され地域の食文化とも密接な関係にあった伝統野菜。地元、大阪の伝統野菜を知っていただきたいとCafé&Meal MUJI難波では2014年秋から「なにわの伝統野菜」を使っています。その地の季節を感じることができる「なにわの伝統野菜」。店頭で見かけたらぜひ一度味わってみてください。

Topics: Column
一覧に戻る